みなさんこんにちは。
 先輩方の恐れていた交流戦も終わり、
 先週末からリーグ戦が再開されました。
 私たちはというと、先日から絶賛期末テスト期間です。
 中間テストの時は部室に顔を出したり出さなかったりだったので、
 今日はテスト期間中も活動があるのかどうか、
 先輩方にちゃんと聞いてみようと思います。
「こんにちは」
「お、遥ちゃんやっほー」
 部室にいたのは浜愛先輩と虎々奈先輩です。
 今日も、浜愛先輩が笑顔で手を振ってくれて……
 む……?
 なにやら浜愛先輩の雰囲気が、
 いつもと少し違うような……。
「う……遥、どーかしたん?
 ほらほら、そこ空いとるから座りや」
「ありがとうございます」
 虎々奈先輩にお礼を言いつつも、
 私はその場に立ち尽くしたまま、
 失礼を承知で浜愛先輩を見つめています。
 なにか、こう……なにかが変わって……あ。
「浜愛先輩、髪を切りましたか?」
「やったー! はーい私の勝ちー!
 ジュース一本ゲットー♪」
「はぁああああ!? んなアホな!
 抗議や抗議! 二人で口裏合わせとるやろ!」
「そんなことしてないよー。ねー遥ちゃん?」
 浜愛先輩に髪を切ったかどうかを尋ねただけで、
 お二人のテンションが急上昇しました。
「口裏とかはよく分かりませんが、ええと……」
「あーごめんね? これ昨日切ったんだけど、
 遥ちゃんがそれに気付いてくれるかどうかで
 賭けをしてたんだよ」
「なるほど、それで浜愛先輩が勝ったのですね」
「そ。遥ちゃんなら絶対気付いてくれるって信じてた!」
「ちなみにウチは言われるまで全く分からんかったし、
 言われても全く分からんわ。つーか、
 ホンマは切ってないんとちゃうの?」
「そんなことないよ! 後ろなんか1cmも
 短くしたんだよ?」
 うなじの辺りに手を回して、
 浜愛先輩が短くなった髪をアピールしています。
 確かに微妙な違いではありますが、
 なんとなく雰囲気が違ったので、尋ねてみたのでした。
「もっとバッサリいかな気付かんて。
 そんなん、打者の手元で微妙に曲がる
 ツーシームみたいな変化やん」
「いやいや、私にとっては
 千賀のフォークぐらいの変化だよ!」
「曲がりすぎやろ! そんなん
 ロングヘアーが丸坊主くらいの縦変化やん!」
 千賀さん……名前は聞いたことがあるような気がします。
 どこのチームかは分かりませんが。
「でも、やっぱ気付いてもらえると
 嬉しいもんだねー。ふふっ♪」
 浜愛先輩がゴキゲンになってくれたのなら、
 私としても嬉しい限りです。
「つばめ先輩と美羽璃先輩は、
 今日はお休みですか?」
「うん、期末前だからね。美羽璃は真面目だから、
 テスト期間は基本休んでるよ」
「いうても去年、阪神相手に大勝した翌日だけは
 ちょろっと顔出してたけどなー」
 その時の様子を想像すると、
 少し笑いそうになってしまいます。
「つばめは……まあ、いつものだね」
「わ、わかりました」
 つばめ先輩、どうかお大事に……。
「テスト期間中は基本的に自由参加だから、
 遥ちゃんも勉強優先するなら、
 無理に顔出さなくていいからね」
「ま、ウチらは毎日おると思うけどな」
「だね。野球の話できるのはここだけだし」
「ということは、お二人はここで勉強を?」
「せやな……配球の組み立てとか継投とか、
 そういう勉強なら大歓迎なんやけど……」
 虎々奈先輩が急に窓の外を眺め始めました。
 外になにかいるんでしょうか。
「虎々奈、いっつも帰ったらやるって言ってるけど、
 ホントに勉強してる?」
「なっ……あ、当たり前やないかーい!
 勉強好き好き虎々奈ちゃんを舐めたらアカンで!」
「じゃあ、中間の出来はどうだったの?」
「そんなん聞いたらアゴ外れるで! ええか?
 背番号で言うたら数学はメッセンジャー、
 国語は青柳、英語は火の玉ストレート! 藤川球児や!」
「おおお……!」
 背番号で言われてもさっぱりなのですが、
 虎々奈先輩の意気揚々とした様子からして、
 きっとどれも高得点に違いありません。
「その人達の背番号、帰ったら調べてみますね」
「あーいやー、それは調べんでもええんちゃうかな?」
「ぷっ……どうせなら、原口とか
 狩野目指して頑張ってみたら?」
「いや、それは……あーでも、
 そんくらいエエ成績取ったら美羽璃にデカい顔できるな……」
 部室に来てはいなくても、虎々奈先輩の頭の中には
 常に美羽璃先輩の存在があるようです。
 やっぱり二人は仲良しですね。
「では、私もなるべく活動に参加するよう心がけます」
「あはは、そこまで張り切らなくてもいいよ?
 来たいときに来てくれれば、それで嬉しいから」
「勉強でどっか分からんとこがあったら、
 いつでも教えたるでー」
「本当ですか!?」
「えっ……」
「あの、私数学が苦手で……」
「あーっと残念! 数学は浜愛の得意分野やから、
 ウチより浜愛の方が頼りになるで!」
「はあ……はいはい」
 期末テストが終われば、すぐに夏休みがやってきます。
 それはつまり、夏の甲子園が近いということでもあります。
 高校野球を満喫するためにも、勉強をしっかり頑張ります!