みなさんこんにちは。
 昨日おとといに引き続き、今日もとっても暑いです。
 クラスのみんなは文句を言っていましたが、
 一足先に夏が来たと考えれば、
 私としては素敵なことだと思えてしまいます。
 今、この部室から聞こえる吹奏楽部の練習も、
 ひょっとしてひょっとすると、
 野球部の公式戦に向けたものかもしれません。
 今年も、あの季節がやってくるのです。むふー。
「あれ? つばめ、眼帯どーしたん?」
「結膜炎が治ったから、お医者様がもういいって……」
「それ、ヤクルトの調子が上向いてきたから?」
「ふふ、そうかも……この勢いで、
 目指せAクラス……ふへへ」
 今日は浜愛先輩、虎々奈先輩、つばめ先輩の3人が来ています。
 美羽璃先輩は家族で出かける用事があるので、欠席とのことです。
 坂本選手が最近調子を落としているらしいのですが、
 それと欠席とは一切関係がないということをやけに強調していました。
「日曜日も、惜しかったのよね……
 途中までは良い流れだったし、
 最後もサヨナラのチャンスだったんだけど……」
「9回はホンマに焦ったわ。
 ウチ、ひたすら神様にお祈りしとったもん」
「山田も雄平もキレイに抑えられて……
 ドリスみたいな頼もしい助っ人がいて、羨ましいわ……」
「今の阪神はリリーフが盤石だよね」
「せやろー! 特に桑原、マテオ、ドリスの3人が
 めっちゃええねん! それこそJFKの再来や!」
「桑原が活躍してるのは、私としても嬉しかったり」
「あの……私、いまだにマテオとドリスの
 見分けがつかないのだけれど……」
「あ、それ私も!」
「あーへーきへーき、ウチも時々見間違えるから」
「虎々奈ちゃんも、なの……?」
「せやで。パッと見よう似とるから、
 『回跨ぎかーい!』ってツッコんでまうし」
 順位がひとつ上がったこともあってか、
 先週初めてお会いしたときに比べて、
 つばめ先輩の肌つやが若干良くなっている気がします。
 こうなると、やはり首位に立ったときにどうなるのかが気になります。
「ルーキが敬遠を失敗したときは……
 一瞬、目まいがして倒れそうになって……」
「あれはなぁ……ウチとしてはラッキーやったけど」
「私もニュースで見て、小杉を思い出しちゃったよ」
「ああ、去年の……山田がバッターだったわね」
「そーそー、ワイルドピッチからの敬遠暴投で……
 うー、忘れたい記憶が蘇る……!」
 ただ、ヤクルトの順位が上がったことで、
 浜愛先輩の応援する横浜は5位に転落してしまいました。
 ゲーム差は同じようなのですが、
 どうやら勝率がヤクルトを下回っているようです。
「そーいや、最近筒香出てないん?」
「そうなんだよー、股関節に違和感がどうとかって……」
「怪我……怪我の時は無理しちゃダメよ……
 注意一秒怪我一生……クセになってからじゃ遅いの……」
「でも、私としては御の字というか、ある意味よかったかなって」
「そうなん?」
「うん。待望の初ホームランはこの前出たけど、
 それでもまだ本調子じゃない気がしてたんだよね。
 もし、その理由が股関節の違和感だったんだとしたら、
 それさえ治っちゃえば完全復活が期待できるかもって」
「確かに、今の筒香は去年ほど怖さ感じんなぁ」
「それに便乗して、ウチの山田も完全復活しないかしら……」
「なにより、来週から交流戦だもんね。
 筒香を中心に、出来るだけ良いチーム状態で臨まないと!」
「うぁー、交流戦かぁ……」
「……古傷が開きそう……」
 この暑さに参ってしまったのか、
 虎々奈先輩とつばめ先輩が机に突っ伏してしまいました。
 ここは、後輩の私が団扇かなにかで扇ぐべきでしょうか。
「先輩、交流戦とはなんですか?」
「……毎年、このぐらいの時期になるとね……
 リーグの垣根を越えて、セリーグのチームと、
 パリーグのチームの試合が開催されるの……」
 顔だけをこちらに向けたつばめ先輩が、
 やけに苦しそうな表情で説明してくれました。
 ついさっきまでは普通に見えたのですが、どうしたのでしょうか。
「なるほど、それで『交流』戦なのですね。
 なんだか楽しそうです」
「まあ、パの連中は楽しいやろなぁ……」
 ははは、と乾いた笑いを浮かべて、
 虎々奈先輩が遠くを見るような目になっています。
「セリーグは楽しくないのですか?」
「あはは……まあ、イベント事って意味では楽しみなんだけど、
 セリーグのファンにとっては、ちょっとね」
 パリーグにとっては楽しみで、
 セリーグにとってはちょっと……な交流戦。
 どうしてなんでしょうか。
 余談ですが、私はこのセリーグとパリーグを、
 いつかどこかのタイミングで「せ」「ぱ」と
 呼んでみたいと思っています。憧れです。
「交流戦はな、パリーグにとってボーナスステージに
 なってしもてるんよ」
「ボーナスステージ、ですか?」
「交流戦って、私たちが小さい頃からやってるんだけど、
 セリーグが勝ち越したのはたったの1回だけなの」
 小さい頃、ということは、少なくとも
 10回近くは行われていると考えていいのでしょうか。
 それで勝ち越しが1回だけというのは、
 誰がどう見ても劣勢という他ありません。
「ということは、それ以外は全部パリーグが
 勝ち越しで終わっている、ということですか」
「そう……セリーグに勝ち越しを決めて、
 貯金を増やすなり、借金を減らすなりして
 ホクホクと普通のリーグ戦に帰っていくの……」
 なるほどです。それで、虎々奈先輩もつばめ先輩も、
 ケーキバイキングで張り切りすぎて
 動けなくなった人、みたいにグッタリしているのですね。
「贅沢は言わんから、
 なんとか5割で乗り切れへんかなぁ……」
「怪我人さえ……怪我人さえ出なければいいの……
 そうすれば、交流戦が終わった後でも希望が持てるの……」
 交流戦、浜愛先輩が言っていたとおり、
 イベント要素があって面白そうなのですが……
 私としては、部室の雰囲気が暗くならないことを祈るばかりです。
 セリーグの皆さん、頑張ってください!