みなさんこんにちは。
 梅雨を思い出すような天気が続く毎日でしたが、
 今日はひさしぶりの青空です。秋晴れというやつです。
 学校に向かういつもの通学路では、どの家も
 ここぞとばかりに洗濯物やお布団を干していました。
 ただ、明日からはまた天気が崩れてしまうようなのです。
 となると、屋外での試合がどうなるか気になるところですが……
「2年連続ファイナルステージ進出やったぁーーーー!!!」
 これはまさに天国と地獄……と言うべきでしょうか。
「おめでとう……浜愛ちゃん……」
「ありがとーつばめ! 今年も広島と戦える!
 去年のリベンジを果たしてやるぞー!」
 今にも部室を駆け回りそうなくらい、
 子供のようにはしゃいでいる浜愛先輩と……
「……なんでや……なんでなんや能見……
 アイ……アイドントライク、ノウミサン……」
 魂が抜けてしまったかのように、
 うわごとをくり返す虎々奈先輩。
 昨日の試合で明暗の分かれた二人が、部室に同席しています。
「おーっほっほっほっほ!
 タイガースはお気の毒だったわねぇ〜!」
 そしてなぜか、鬼の首ならぬ虎の首を取ったかのように、
 美羽璃先輩が今年一番イキイキとしています。
「先勝してからの2連敗で敗退……ぷっ、ふふっ……
 やっぱり本場の関西なだけあって、
 タイガースはお笑いというものをよく分かっているわね!」
「うっさいわー! 好きでオチつけたわけちゃうぞコラぁ!」
「ファーストステージで初戦を取ったチームの突破率は
 9割越えって聞いてたから、もうダメかと思ってたけど……
 奇跡の大逆転だよ! ここからの下克上だよ! 倒すぞ広島! 勝つぞ横浜ー!」
「ということは、阪神は残りの1割を引いたというわけ?
 くふふっ……笑えるわ、傑作だわ、最高だわー!」
「CSにも出れん球団がなに笑うてくれとんねん!
 頭ひっぱたいたろか!? あぁあああ!?」
「お、落ち着いて虎々奈ちゃん……
 美羽璃ちゃんも、それくらいにして……」
「あぁあぁ……嫌な予感はしとったんや……パリーグの方でも
 初戦で大勝した西武が楽天に大逆転食らって……
 次はウチの番ちゃうかって不安が、頭をよぎってはいたんや……」
「そして……虎々奈ちゃんのその不安は……
 現実のものとなってしまいました……」
「だぁあああああああああああ!!!」
 つばめ先輩、二人のいさかいを止めてくれたかと思いきや、
 煽るようなナレーションを入れてきました。
「なんでや……なーんでウチはいっつも
 CSになるとダメ虎になってしまうんや……」
「だめとら……?」
「阪神が弱かった頃にね……よく、
 そういう呼ばれ方をしていたみたいなの……」
「ダメダメな虎、略してダメ虎ね。ふふふ」
 この前の仕返しとばかりに、
 美羽璃先輩のニヤニヤが留まるところを知りません。
「それにしても、2戦目はすごい試合でしたね」
「あれねー、普通だったら絶対中止だったよね」
 グラウンド状況は今まで見たこともないくらい悪く、
 ところどころ水たまりができていました。
 ゴロはまったく転がらずに止まってしまい、
 ピッチャーも制球に苦しんでいて、まさしく泥仕合です。
「選手達の必死さが目に見えて伝わってきて、
 見てる途中で泣きそうになっちゃったよ……でも、
 勝ててよかった……!」
「見てる分には……ドラマチックっていうか……
 死闘って感じで、盛り上がるんだけど……
 私としては、選手が怪我しないか心配になっちゃって……」
「つばめが言うと説得力が増すわね……
 でも確かに、あの光景は見応えがあったわ。
 私もついつい本気になって、横浜を応援してしまったもの」
「なんで横浜応援しとんねん。坂本様のファンちゃうんか!」
「もちろん一番は坂本様よ。けど、阪神が負ければ
 虎々奈を思いっきりイジれるんだから、当然でしょう?」
「うわぁ〜出た出た! これだから巨人ファンは根性腐っとんねん!」
「でも……去年……同じ状況で、巨人と横浜が
 ファーストステージで戦ったとき……
 虎々奈ちゃん、横浜応援してたよね……」
「……それはそれ、これはこれやぞつばめ!」
「つ、つまり総括すると、横浜は
 誰からも愛されるチームということですね」
「うんうん、遥ちゃん良いこと言った!」
「はっはっは、遥はおもろい後輩やなぁ。
 ここ数日で目から血ぃ出るほど悔しい思いさせられたチームに、
 愛もクソもあるかー!! 3連敗でとっとと終わってしまえー!」
「そういうところが本当に子供なのよね……
 私なんて、3位争いの悔しさはもうキレイさっぱり忘れたもの」
「そらチーム愛が薄っぺらいお前ならではやろ」
「私としては、今年の広島には散々してやられたから、
 どちらかと言えば横浜に勝ち進んでもらいたいところね。
 というわけで、頼んだわよ浜愛」
「まかせて! 選手達も去年のリベンジに燃えてるはずだし、
 なにより、今シーズンは広島に勝ち越してるからね!
 この勢いのままマツダに乗り込んで、ロッテ以来の
 3位からの日本シリーズ出場を目指すよ!」
「もう今日から、なんだよね……
 日程がキツいけど、良い試合が観られるといいな……」
「というわけだから、私もう帰るね!
 家で観戦の準備しないと! みんなおつかれー!」
「おつかれさまです、浜愛先輩」
「虎々奈はどうする? 特に予定がないのなら、
 スイーツでも食べながら残念会というのはどうかしら?」
「アホぬかせ、だーれがお前みたいな性悪女と……」
「今日は特別におごってあげてもいいわよ?」
「よっしゃ行くでー! つばめも遥も仕度せえ!」
「ちょ、ちょっと、おごるのはあなただけだからね!」
「ふへへ……ごちそうさま、美羽璃ちゃん……」
 雪辱に燃える挑戦者の横浜ベイスターズと、
 王者として待ち受ける広島東洋カープ。
 どんな結果になるにせよ、今日からのファイナルステージは
 間違いなく見応えのある試合になることでしょう。
 野球好きとしては、見逃せません!