みなさんこんにちは。
 先週18日、広島東洋カープがリーグ優勝を決めました。
 聞いた話では、今年の広島はチーム勝利数の半分くらいが
 逆転勝ちとのことです。先輩方も、その勝負強さが
 広島の怖いところだと言っていました。
 1位のチームは決まりましたが、
 これでシーズンが終わったわけではありません。
 クライマックスシリーズへの進出権をかけて、
 今もいくつかのチームが死闘を繰り広げているのです。
 なので最近、部室に入るときにいつも緊張します……
「こんにちは」
「遥ちゃん! ようこそ!」
 いつもより内角高めのテンションで私を迎え入れてくれたのは、
 昨日一昨日と阪神タイガースに勝ち越して
 ゴキゲンな様子の浜愛先輩です。ということは……
「あと2勝……いや1勝でええんやぞ……
 それでCSが決まるって時に、なんやねんあの貧打戦は……!」
 その横浜ベイスターズに2連敗を喫した虎々奈先輩は、
 必然的に浮かない表情となっています。
「満塁で三上のときは心臓止まるかと思ったけど、
 やっぱりマウンド度胸はバツグンだよね!」
「せめて四球でもいいから1点を……と思って見てたけど、
 その後ろ向きな発想がすでにアカンねんな。
 昨日は昨日で、打って投げれる助っ人ウィーランドに
 コテンパンにやられてしもたし」
「投げては9回完封勝利、打っては先制点に繋がる
 チーム初安打……もーウィーランド様々だよー!
 今月バイト代厳しいけど、ユニ買っちゃおうかな……!」
 悲喜こもごもで試合を振り返る二人の影で、
 ずーっと机に突っ伏している先輩の存在に気付きました。
「つばめ先輩、今日はお元気ですか……?」
「ん? つばめは今日来てへんよ」
 あれ?
「昨日の夜、つばめから
 『5点差も守れなくてごめんね……ごめんね……』って、
 呪文みたいにずーっとライン来てたなぁ……」
「先週会ったときは、歴史的瞬間の目撃者になれるなんて
 ラッキーだとか、珍しくポジティブなこと言っとらんかった?」
「歴史的瞬間……?」
「悪い意味で、だけどね……。
 ヤクルトは今、シーズン敗戦数の球団記録を
 更新しそうなくらい負けちゃってて……」
「きゅ、球団記録ですか……」
 プロ野球のニュースを見ていると、時々
 「十何年ぶり」といった言葉を耳にしますが、
 これもきっと、同じようなスケールの話なのでしょう。
 いや、それよりも……
「ちょっと待ってください、
 そこにいるのがつばめ先輩ではないのなら……」
「あら遥さん、来ていたのね……ごきげんよう」
 美羽璃先輩……!?
「ご、ごきげんようございます……」
 どんよりとした雰囲気というか、
 身にまとったオーラがあまりにも似ていたので、
 てっきりつばめ先輩が今日も来ているのだとばかり……。
「美羽璃は今、ご自慢の坂本サマが絶不調ど真ん中やから
 一緒になって落ち込んどんねん。ファンの鑑やなぁ」
「ええ……私から坂本様を取ったら何も残らないもの……」
「いや、調子狂うでホンマに……」
 虎々奈先輩の発言に噛みついてこないところを見ると、
 私としても心配になってしまいます。
「坂本は……このままいったらシーズン終わるまで
 あんな感じだよね、多分……」
「そうなのよ……ヒットが1、2本出たところで、
 トンネルを抜けたようには思えないの……
 きっとお疲れになっていらっしゃるんだわ……」
「でもまあ、巨人は確かあと5試合くらいやろ?
 それが終わったらゆっくり休めばええやん」
「いやいや、まだウチと1.5しか離れてないし、
 ここから巻き返してCS出場の可能性も……」
「坂本様が苦しむ姿を見ることになるのなら、
 CSなんて行かなくていいわよ……」
 どんなに落ち込んでいようとも、坂本選手を中心に
 世界が回っているあたりは美羽璃先輩らしいです。
「えぇ……チームがCS逃したら坂本様も悲しむやろ……」
「そもそも、昨日の試合はなに?
 シーズン敗戦記録を更新しそうなチームに
 辛くも勝利ってどういうことなの……?
 お金があるならもっと打てる選手を連れてきなさいよー!」
 ぶんぶんと拳を振り回しながら、
 涙目になった美羽璃先輩が訴えています。
「先発は今のセリーグで間違いなく一番揃ってるからこそ、
 打線がパッとしないのは歯がゆいよね……」
「でも今日は菅野やろ? 1点でも取れれば勝ちみたいなもんやん」
「そうだけど……でも、菅野ってなんか
 ここぞというところで打たれるイメージがあるのよね……
 まあ、今年の菅野は大丈夫だと思うけど」
「ウチとしては巨人に負け越してるから、
 CSでやるなら横浜の方がええなあ……とか思っとったけど、
 昨日一昨日の試合見たらどっちもイヤになってきた……」
「そういえば……阪神が4位に落ちる可能性って
 まだ残ってるのよね?」
「あるにはあるけど、そんなん次の中間で
 ウチが全教科平均点取るくらいの確率やぞ」
「じゃあ無理じゃない……」
「自分で言うといてアレやけどなんか腹立つな……」
「でも分からないよ! うちが今3.5まで
 阪神との距離縮めてるし、明日からの3連戦で
 ひょっとしたらひょっとするかも……」
「え、縁起でもないこと言わんといてや浜愛……!
 こっから4位転落なんて、つばめじゃなくても
 体調不良で入院モノやで」
「虎々奈の落ち込んだ顔を見られる可能性がまだ残ってる……
 そう考えたら、なんか元気が出てきたわ」
「相変わらず巨人ファンは性格ねじ曲がっとるなぁ……」
「ひとまず今日のヤクルトをサクッと倒して、
 残り試合も全勝するのよ! 坂本様が諦めていない限り、
 私も諦めないんだから!」
「巨人に並ばれたときは3位を死守しないとって思ってたけど、
 うちもまだハマスタでCS開催の可能性が残ってるんだよね……
 なら、それを目標にして頑張らないと!」
「う……と、とりあえず、明日からは得意のハマスタで
 3連戦やから、負け越さなけりゃ大丈夫やろ……うん」
 早ければ今週末、遅くとも来週の頭には、
 雌雄が決している……と考えていいのでしょうか。
 阪神、横浜、巨人……三つ巴の戦いの結末やいかに!