みなさんこんにちは。
 このところ毎日のように同じ空模様が続いていて、
 いまいち夏っぽくないような気がします。
 ですがご安心ください。遂に来週の月曜日から始まります。
 はい! 全国高校野球選手権です!
 私にとっては、これこそが「夏」という単語と同義なのです。
 なので、これさえ始まってしまえばどんな天気でも夏なのです。
 雪が降ろうが雹が降ろうが、気温が5℃を下回ろうが夏なのです。
 さて今日は「夏といえば」という浜愛先輩の提案で、
 とても夏らしい場所にみんなで遊びに来ました。
 久しぶりに燦々と照りつける日差し、耳にも涼しい水の音。
 そう、ここは――
「海やーーーーーー!!」
「虎々奈先輩、プールですよ!」
 あまりにも元気よく叫ばれたので、
 一瞬騙されそうになってしまいましたが、違います!
「わっはっは! テンション上がりすぎて
 盛大に勘違いしてもーたわ」
 最寄り駅から電車に揺られること一時間弱の、
 大きな市民プールに先輩方とやって来ました。
「プールなら私の家にもあるのに、どうしてわざわざ……」
「いやー、美羽璃ん家のもあれはあれで良いんだけどさ。
 でもやっぱ、人が大勢いた方がイベントっぽくない?」
「イベント、と言われると……確かにそうかもしれないけど」
「それに見てみー、このでっかい流れるプール!
 いくら金持ちの美羽璃でも、流れるプールは持ってへんやろ?」
「つ、作ろうと思えば作れるし!」
 プールに行くと決まってから、私は慌てて
 去年の水着を引っ張り出してきました。
 なのでちょっと、胸やお尻のあたりが窮屈です。
「今日は晴れてよかったねー。プール日和って感じする!」
 浜愛先輩は青いビキニ、美羽璃先輩はオレンジのパレオ
 そして虎々奈先輩の水着は……
(虎縞模様……!)
 なんか、昔のアニメにそんなヒロインがいたような気がします。
 頭に鬼のツノみたいなものが生えているやつです。
 虎々奈先輩の水着は、まさにそんな感じです。
「というか、なによそのダサい虎の模様は」
「どこがダサいねん! 猛虎魂あふれるサイコーの水着やんか!」
「こんな時でもタイガース? 暑苦しいことこの上ないわね……」
「そういう美羽璃も、そのオレンジは
 ジャイアンツカラーじゃないの?」
「これは、まあ……そうだけど」
 先輩方の水着は、みんなチームカラーです。
 こういう時、好きな球団が決まっていないことが
 ちょっと残念に思えてきます。
「そういえば、つばめ先輩はどちらに?」
「つばめなら向こうよ」
 美羽璃先輩の指さした先は、
 大きなパラソルの並んだ休憩場所です。
「んー? どこやねん」
「だからあそこよ、あの日陰になってるところ」
「あ、いました」
 頭にタオルを被っていたので分かりづらかったのですが、
 こちらに向かって弱々しく手を振っているのは、
 確かに我らがつばめ先輩です。
「つばめ先輩、こんな炎天下で大丈夫なんですか?」
「私も心配したんだけど……火薬庫が好調だから
 大丈夫って言われたんだよね」
「火薬庫……?」
「なんか、ネットでヤクルトの打線がそう呼ばれてるらしいよ」
「火薬の薬と、ヤクルトのヤクをかけてるんでしょうか」
「確かにここ最近打線が活気づき始めてるんだよね。
 昨日も4点のビハインドひっくり返してたし……
 うー、来週やりたくないなー」
「それ言うたらウチは今日からやで。
 昨日イヤな感じで引き分けに終わっとるから、
 ちゃちゃっと切り替えて欲しいとこやけど……」
「あー! そもそもウチ今日から広島戦じゃん!
 なんとか勝ち越してくれますように……!」
「野球の話もいいけど、せっかくこういう
 庶民的なプールに来たんだから、早く遊びましょうよ」
「せやなー。よっしゃ、早速ビーチボール投げいくでー!
 落としたやつは罰ゲームやー!」
「いいねー、じゃあ罰ゲームは
 好きな選手の名前をここで思いっきり叫ぶとか!」
「坂本勇人様ぁーーーっ♪」
「罰でもないのに叫ぶなや!!」
「あの、私はどうすれば……」
「あーそっか、遥ちゃんは好きな選手でもいいし、
 好きな高校の名前とかでもいいよ?」
 好きな高校名……そうなってくると、
 当然地元の高校が頭に浮かぶのですが……
「いくでー! そりゃあ!」
 いや、しかし……! せっかく叫ぶのであれば、
 口に出して呼びたい高校名を叫びたいです!
「とうっ! 遥さん、行きましたわ!」
 であれば、やはり――
「中京大中京ぉーーーーーーっ!!!」
 はっ……罰ゲームでもないのに叫んでしまいました……!



「んーっ、やっぱプールって冷たくて気持ちいいー!」
 ビーチボールで遊び始めてから、
 気付けば一時間が経過しました。
 最初は冷たく感じた水の温度も、
 今ではすっかり心地良いくらいになっています。
「さて、次はなにして遊ぶ?」
「ちょっと休憩にしない? 私、喉が渇いたわ」
「せやな、一旦つばめのとこに戻ろかー」
 プールから上がって、犬のようにぷるぷると頭を振ります。
 私は髪が短いので、それだけで水気が飛んでいくのです。
「遥ちゃん、その水着可愛いね」
「ありがとうございます。
 浜愛先輩はとてもスタイルがいいですね」
「あはは、ありがと」
「ホンマやなー。出るとこは出て
 引っこむところは引っこんどるなんて、
 羨ましいわー……」
「ふふっ、虎々奈はなんというか、
 お子様スタイルよね」
「なっ……誰がお子様スタイルやねん!
 現在進行形で絶賛発育中やぞ!」
「発育中、ってことは、
 今は控えめなことを認めてることになるけど?」
「揚げ足とるなやー! ええか、
 ウチのスリーサイズ聞いたらビビるで!」
「いくつなのよ」
「バストは高代延博! ウエストサイズは中谷将大!
 ヒップのサイズは片岡篤史や! どやー!」
「全然わかんないわよ!」
「また背番号? しかもコーチかぁ……好きだねそれ」
「まあなー。美羽璃も帰って調べたら分かるやろ。
 さ、今度はそっちの番やで」
「へ……?」
「惚けたって無駄やぞ。ウチが乙女の秘密を打ち明けたんやから、
 そっちも暴露するのが筋っちゅーもんやろ!」
「虎々奈が勝手にぶっちゃけただけじゃない!」
「恥ずかしかったら、虎々奈みたいに
 背番号で言うのもありじゃない?」
「いや、私は別に恥ずかしいとか、
 そういうわけじゃなくって、そもそも……」
「はっ、美羽璃のことやから、
 坂本様以外の背番号なんて知らんのちゃう?」
「なっ……そ、そんなことないわよ!
 言ってやろうじゃない!」
 美羽璃先輩、虎々奈先輩の口車に
 乗せられまくってる気がします……!
「まず、バストは……背番号……?
 ええと……ほら、あの……か、亀井?
「亀井!?」
「えっ、えっ……? なにかおかしかったかしら?」
「ぷっ……亀井の背番号って確か9やろ?
 つまりバスト9て……だっははははは!!
 人間ちゃうやんそれ! わはははははははは!!」
「なっ! い、今のはナシ! えっと、バストはっ、そう、
 坂本様が13人分で、ウエストは坂本様が11人分!
 で、ヒップは坂本様が14人分くらいよ!」
「坂本選手がいっぱいですね、合計で38人です……!」
「38人の坂本様……!? ああ……
 想像しただけでクラクラしてしまいそう……♪」
「それ熱中症の初期症状ちゃうの? こまめに水分摂った方がええで?」
「うるさいわよ!」
 そんなことを話しているうちに、
 私たちは休憩所に到着しました。
「やっほーつばめー。ちょっと休憩に…………」
「ん? どしたん浜愛? って……」
「なによ二人とも、早くそこに座っ……て……」
 つばめ先輩の元にたどり着くなり、
 先輩方がその場で立ち止まってしまいました。
「どうしたのですか?」
 先輩方の表情をのぞき込んでみると、
 3人の視線がある一点に注がれていることがわかります。
 それを追ってみると……
「みんな……どうかした……?」
 ワンピース水着を着たつばめ先輩の胸元……
 それはまるで、メロン……いや、スイカのような――
(((((大っきい……!))))
 4人の心の声が、ひとつになった瞬間でした。
「つばめ……お前、着やせするタイプやったんか……」
「え……? なんの話……?」
「なんていうか……『バレンティン』って感じ……」
「バレンティン……が、どうかしたの……?」
「あっ……ご、ごめん! こっちの話!」
 体育座りをしているからか、
 ただでさえ大きな胸が太ももに押し当てられて、
 いろいろとえらいことになっています。
 水着からはみ出したりしないか、心配になるくらいです……。
「寝る子は育つっちゅーのはこういうことなんかな」
「寝るっていうより、病に伏してるイメージだけど……」
「山井……? あ、中日の……?」
「誰よそれ……そっちじゃなくて病気の方よ」
 ひょっとして、つばめ先輩が病気がちな理由は、
 身体の調子を整えるための栄養が
 全てここに注がれているのでは……
(……そんなわけはありませんね!)