みなさんこんにちは。
 期末テストも無事に終わって、
 夏休み前の3連休が明けました。
 私はこの土、日、月と地元の市民球場を巡って、
 高校野球の県予選をたっぷりと観戦してきました。
 そうです。そうなのです。ついに始まったのです。
 夏の高校野球大会が開幕したのです!
 ……試合観戦に夢中になりすぎて、
 ちょっと肌がヒリヒリしているのはご愛嬌です。
 さて、今日は終業式だったので、
 夏休み前最後の部活です。
「こんにちは」
「あ、遥ちゃん。やっほー!」
 部室にいたのは浜愛先輩、虎々奈先輩、
 そして美羽璃先輩の三人でした。
 つばめ先輩は今月一度も姿を見ていないのですが、
 ヤクルトスワローズのチーム状況を考えると……
 チーム事情も先輩の体調も、どうか良くなりますように……!
「遥さん、ずいぶんと日に焼けたわね。
 海外に早めのバカンスにでも行っていたの?」
「いえ、国内に留まってはいましたが、
 3連休の間はずっと外にいたのです」
「あ、もしかして高校野球?
 予選始まってるもんねぇ」
「はい!」
 一人で電車に乗れるようになったころから、
 市民球場まで高校野球を観に行くのが
 私にとっては大きな楽しみの一つでした。
「今日もこのあと、13時からの試合を観に行くつもりです」
「はぁー。自分とこの結果くらいは気になるもんやけど、
 ヨソの高校も見に行くんは、ホンマもんやなぁ……」
 特にここ神奈川は、全国でも一二を争う
 激戦区として有名なので、必然的に試合数も多く、
 どこに行っても予選が行われています。
 なので、私にとっては天国のような環境です。
「そういえば、ウチの野球部ってどうだったんだろ」
「残念ながら、我が校は2回戦で当たった
 強豪校に7回コールドで破れてしまいました……」
「あちゃー、夏が終わってしもたか……」
「まあ、普通の公立校だし……難しいよね」
「でも、そう考えると高校野球は凄いわね……。
 4000近い出場校の中で、最後に笑えるのは
 たったの一校だけなんて……」
「そうなんです美羽璃先輩!
 とても良いところに気が付きましたね!」
「え、えっ……?」
「夏の甲子園は一度でも負けたらそこでおしまいです。
 そして、最上級生の引退がかかった大会でもあります。
 部員達は常日頃から積み重ねてきた
 練習の成果を遺憾なく発揮し、
 全員が一丸となって真剣勝負に臨むわけです。
 だからこそ、高校野球はドラマが満載なんです!
 汗と努力と涙の結晶! これこそまさに青春の象徴!」
「遥ちゃんがいつになく熱くなってる……!」
「どうでしょう、今度私と一緒に高校野球観戦を!」
「え、ええと……私には坂本様がいるから……
 遠慮しておくわ……」
 むむむ、勧誘失敗です。
「8月になったら、熱闘甲子園もまた始まるんやろなぁ」
「あれ、ついつい見ちゃうよね。
 確かに遥ちゃんの言うとおり、
 一球一球にドラマが詰まってて……
 私、何度かもらい泣きしちゃったことあるよ」
「夏の甲子園はハンカチ必死ですよ!
 ティッシュも可です!」
「甲子園、ハンカチ……あかん、頭が……」
「あ、あはは……そういえば遥ちゃん、
 オールスターは見てた?」
「はい、その時間には家に帰って、
 2戦とも家族で見ていました」
「まあ……! ということは、ウチの小林が
 まぐれで打ったホームランを見た坂本様の
 素敵な笑顔をその目に焼きつけることができたのね!」
 申し訳ないことに焼き付いてはいないのですが、
 巨人の選手がホームランを打ったのは覚えています。
 なにやら、色々な意味で盛り上がっていたようなので。
「あれ面白かったよねー! 特に由伸監督!
 私録画してたから、あの場面だけ
 3回くらい見ちゃったよ」
「私も何度も繰り返し見たわ。
 ほら見て? あの時満面の笑みを浮かべていた坂本様を、
 待ち受け画面にしたの! 素敵でしょう?」
 美羽璃先輩が見せてくれたスマホの画面には、
 確かに坂本選手の笑顔が収められていました。
 なにやらキラキラとした特殊な加工が
 これでもかというくらいに施されているのですが、
 美羽璃先輩の目には、いつもこんな風に
 見えているのかもしれません。
「あの人がホームランを打ったとき、
 どうして監督は落ち込んでいたんですか?」
「あー、あの小林っちゅー選手は、
 まだシーズンで1本もホームラン打ってへんねん。
 なのにオールスターで完璧な当たりを
 ぶちかましたから、シーズンでも打てやー!
 ってツッコまれたんやな」
「なるほど……」
 そういえば、実況席に呼ばれた坂本選手も
 そういった事を言っていた気がします。
「WBCの活躍っぷりと比較されちゃって、
 小林にとっては苦しいシーズンになってるよね」
「つーか、小林っていま打率なんぼなん?」
「さあ、私に聞かれても……
 まだ2割を切っているんじゃないかしら。
 よく知らないけど」
「坂本の話題と温度差ありすぎやろ……」
「でも、選手の皆さんが
 楽しそうに野球をやっていたので、
 見ているこっちまで楽しい気分になりました」
「分かるー! 好プレーとか珍プレーが飛び出したときに、
 選手みんなが笑顔なのって、なんかいいよね!」
 普段はシーズンを競い合ってる選手同士が
 チームメイトとなって試合をするのは、
 オールスターならではの醍醐味なのだと思いました。
「さてと、ウチはそろそろ帰ろかなー」
「じゃ、今日はお開きにしよっか」
「あっ。そういえば、夏休み中の活動は
 どのような感じになるのでしょうか?」
「ああ、基本は自由参加……っていうか、
 話したくなったら連絡取り合って部室に集まる感じかな。
 去年もそうだったよね?」
「せやな。場所もそん時の気分でテキトーに決めとったし」
「部室は利用しないのですか?」
「金がかからんって点はええんやけど……
 いちいち制服に着替えんのもめんどいし、なによりこの部室、
 クーラーないから夏場はキツいねん……」
「私の家で良ければ、いつでも招待してあげるわよ?」
「はっ! だーれが行くかい!!」
「な、なんでよ!?」
「ウチは忘れてへんぞ……
 去年の8月、美羽璃に誘われて巨人阪神戦を観に行ったとき、
 延長10回表に北条が勝ち越しの2点タイムリー打った瞬間、
 お前テレビ消したやん!!」
「……そんなことあったかしら?」
「忘れたとは言わせへんぞー!
 どっちが勝っても恨みっこ無しとか
 言っときながら、負けそうになった瞬間
 大人げないことしよって!!」
「大人げないのはあそこでタイムリーを打つ
 阪神の選手でしょう!?
 巨人ファンの私がホストなんだから、
 気を遣って凡退すべきよ!」
「どんだけ偉いねんお前は! そもそも――」
「とりあえず、夏休みもまったり活動してるから、
 遥ちゃんも自分のペースで参加してくれて大丈夫だよ」
 虎々奈先輩と美羽璃先輩が
 伝統の一戦ならぬいつもの口喧嘩を繰り広げる中で、
 浜愛先輩が笑顔で教えてくれました。
「この季節は大好きな高校野球を優先したいだろうし、
 みんなが集まりそうな日があったら、
 私から遥ちゃんに連絡するね」
「ありがとうございます!」
 まもなく梅雨も明けて、いよいよ夏本番です。
 高校野球は甲子園、プロ野球はシーズン後半戦と、
 どちらも盛り上がること間違いなしです。
 今年はどこが優勝するのでしょうか……!